最近、人気急上昇中のコミック『うせもの宿』、ご存知ですか?
謎の古宿『うせもの宿』が物語の舞台。
宿の客人は、皆、大切な物を探して、この宿を訪れます。
和風ファンタジーというだけあり、独特の世界観が浮世離れしていてストーリーに引き込まれます。
また儚い画風(絵のタッチ)が不思議な人物達や空間を見事に表現しています。
あらすじ
第一話の客人はサラリーマンの男性。働き尽くめの日々の中、何か重要なことを忘れている、という事実に気づきます。
それが、いったい何だったのか…。
分からぬまま、悶々とした日々を送っていたある日、目の前に一人の男が現れます。
マツウラと名乗る、その男はサラリーマンに尋ねます。
「何か失くされましたか?」
突然の出来事に驚くサラリーマンに向かって、マツウラは「失くしたものが必ず見つかる宿がありますよ」と教えます。
(そんな馬鹿な…)
半信半疑のまま、サラリーマンは一軒の古宿へと連れて来られました。それが『うせもの宿』。
桜が咲き誇る中に、ポツンとその宿は建っていました。
第一話・不機嫌な客
番頭さんの案内で宿へと通されたサラリーマンの男。
なにやら無愛想で不機嫌なこのオトコ、不思議な空間を前に、来たことを後悔します。
ですが、来てしまったものはしょうがない。
とにかく忙しい身ですから、早く忘れた記憶を取り戻し、会社に戻らなければなりません。
まずは番頭さんに「早く忘れたものを思い出したいのですが…」と相談します。
どうしたら良いか、と尋ねるサラリーマンに番頭さんは一言、
「女将に聞いてください」
(女将…?)
その後も、従業員たちや料理長に同じ質問を繰り返す客人ですが、返ってくる答えは皆、同じ…。
不思議です(笑)!
のっけから不思議ワールド全開のストーリー展開ですが、違和感なく読み進めてしまえます。
それはひとえにマンガの持つ浮世離れした世界観と、その世界を見事に表現した儚げな絵のタッチのおかげでしょうか。
そこで、この不思議ワールドの主人公『女将』の登場です。
主人公・女将
子供のような女性が廊下の向こうからやってきました。気崩した着物姿で登場のこの人物こそ、主人公の女将。
「え?こんな子供が女将??」
と、またサラリーマンは驚きます。
で、せっかちな客人は早く忘れている大事なモノを思い出したいことを伝えますが、そっけなくあしらわれます。
「客人に向かって、失礼な…!」
と、たしなめる番頭さん。
「すいません。うちの女将、自由人なものでして…」
って、自由過ぎるでしょーッ!違和感ありありの展開に目が離せません。
やがて夕食の時間になり、食事が運ばれてきます。
そこでサラリーマンは、はたと気づきます。
(こ、この料理はもしや…)
そう、別れた妻の手料理そのものの味。
いったい、これはどういうことなんだろう…。
というわけで、あんまり引っ張るのもなんなので、ネタバレしますと、ここは『うせもの宿』。
つまり『失せ者』が『失せ物』を探しにやってくる宿というワケなんです。
ですから、このサラリーマンも既に『失せ者』。つまり今は亡き人です。
そんな彼が、まだあの世へ旅立てていないのは、大切な何かを忘れているから。
女将も宿の従業員も全ての登場人物が『失せ者』というネタバレは、もう少し後の章になりますが、とにかくホンワカした世界観に魅了されます。
お化けの話と聞くと、「怖い」「おどろおどろしい」などの印象を抱きがちですが、むしろ真逆の作品です。
読む者を温かい気持ちにさせてくれます。
ちなみにサラリーマンの『失せ物』は結婚指輪。
忙しさにかまけて家庭を省みなかった反省と、奥さんへ詫びる気持ち、これからはもっと自由に生きたいと願う気持ち…。
そんなことを色々と思い出しつつ、彼の今生は本当の意味で、やっと幕を閉じます。
うせものを求め、彷徨う人々
その後も、霜葉(そうよう)、笠の雪、薄紅、迷い椿、帰り猫…と、美しい和風のタイトルへと話は続きます。
第二巻では玉箒、夏泥棒、春煙草、憂桜…と続き、美しい季節感も現しています。
このコミックにどっぷりハマる人が急増中というのも、うなずける完成度の高さです。
先程のサラリーマンの他にも、登山家のお父さんが忘れていた、大切な御守りを見つけ出す話、遊び好きの母親が心残りにしていた大事なもの、それは息子さんだったという話などなど…。
ほんわかとしたタッチに泣ける展開、自由奔放で果てしなくミステリアスな女将と、全てお見通しの番頭さん達が繰り広げる和風ファンタジー。
謎の案内人・マツウラ
ちなみに全ての登場人物が、今は亡き人々かと重いきや、謎の案内人、マツウラだけはまだこの世の人物です。
このマツウラというオトコ、章を増すごとにますます謎が深まっていきます。
どうやら、うせもの宿の女将がまだ生きていた頃、彼女と接点があったようなのですが…。
さて、中毒者続出の和風エンターテイメントコミック。
あなたもハマってみませんか?
コメントを残す