あらすじ
知的ボーダーって聞いたことありますか?知的障害と正常知能の中間ぐらいの知能指数を持った人達のことです。
IQが低くないため、知的障害の認定が受けられず、支援がない困った状態にいる人達のドキュメントコミックです。
内容は非常に深刻です。
ですが、かわいいタッチのマンガのお蔭で、その深刻さも和らいでいます。
ですから、こういった障害をよく知らない人でも、一気に読み進めてしまえますよ。
漫画家さんもアスペルガー
漫画家さん自身もアスペルガーなどの発達障害を抱えているそうです。さらに、この方の弟さんも知的障害を持っていらっしゃるとか。
漫画家さんのアシスタントの君(きみ)さんには、やはり知的ボーダーで発達障害の認定を受けたヨシ君がいるのですが、このコミックは、この母息子の物語となっています。
主人公・ヨシ君&母の君(きみ)さん
生まれた時からギャーギャーと大声で泣いていたヨシ君。
他の子より多少元気だな、と思っていたのものの、六ヶ月経ってもミルクを欲しがり、なかなか寝ない。
あまりの泣きっぷりに近所から苦情が出る程で、一家は引っ越しをすることに…。
この頃から、何か他の子と違うと感じ、病院を尋ねて回った君さんでしたが、6歳になってようやく診断結果が出ます。
その名も広汎性発達障害。
そんな障害を持ちながらも、IQが低くないため、障害者として認定されないまま、普通の小学校に進みます。
そこでは普通の子供と同じことができないヨシ君の苦悩と葛藤が描かれていて、思わず泣けてきます。
ですが、泣きたいのはむしろヨシ君と君さんの方ですから、ココはグッとこらえました(涙)。
学校側は人間性を疑う程の、非協力的&パワハラ発言の連発!
学校側からの『平均点が下がるから出て行って欲しい』だの、非協力的な担任の発言『できないんだったらT健康学園に送るからな』という暴言の数々…。
ちなみにヨシ君が生まれたのは1996年。
ですからヨシ君が小学校に上がったのは2000年に入ってからになりますが、今なら虐待で訴えられるであろう学校側のパワハラ発言の数々に、ハラワタが煮えくり返ります。
このようなボーダーな人達を支援できる制度が全然、整っていない行政にも問題おおありです。
ヨシ君の例は氷山の一角でしょう。世の中には、同じような悩みを抱えている人達は大勢います。
ですから、このようにベストセラーとして一気に世に踊り出てきたのです。
進学できる中学校がない…
小学校で高学年になった頃、ヨシ君の担任の先生が変わってしまいます。
それまでの担任の先生は理解のない学校側から、うまくヨシ君一家を守ってくれていたようなのですが、今度の先生は容赦ない。
「出来ないなら帰れ!」と、怒鳴りつけたりします。
そんな事言われても、出来ないものはしょうがない…。
だんだん元気がなくなっていくヨシ君。
常々、学校教師の教育者(というより人間?)としての質の低下が叫ばれている昨今、こういった実情がマンガになって皆の目に触れるのは、とても良いことだと思います。
君さんはシングルマザー
お母様の君さんは、ダンナさんと離婚してしまい、シングルマザー。しかも線維筋痛症という病気を発症してしまいます。
全身が痛む中、それでもヨシ君と共に、この子のためなら頑張れると精一杯、気張って生きています。涙を流しながら…。
その後もすったもんだで、どうにかこうにか中学校へ入学したヨシ君の、中学時代の様子へと話は続きます。
そんなヘビーな内容が、マンガのタッチのかわいさと軽さで、だいぶ柔らかくなっていますので、こういった事に今まであまり縁のなかった人達でも入りやすい気がします。
このマンガは主にヨシ君の子供時代にフォーカスしているのですが、そんなヨシ君も今年で二十歳!続編が大変気になる一冊ですね。
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