連日、ニュースで報道されている幼児虐待事件。
テレビで取り上げられるのは、実に氷山の一角で、その水面下では何十倍ものが虐待が繰り広げられています。
そんなかなりヘビーな問題に立ち向かう、熱血児童福祉司の物語です。
綿密に調べ上げられた内容を元に描かれているだけあり、虐待する方もされる側も、その心理描写はとてもリアルで引き込まれます。
主人公もまた子供の頃、母親から虐待を受けており、その傷を癒すために母親と対峙するシーンも…。
たしかにヘビーな内容ですが、少年誌に掲載されているだけあって、スポコン、熱血漢などを彷彿とさせ、涙の後にスカッとさせてくれます。
あらすじ
相川健太は現在22歳。この春から青葉市にある福祉専門職の児童福祉司として採用されました。
ストーリーは健太の記念すべき就職第一日目から始まります。
ちなみに児童福祉司とは、子供が虐待されていると判断された場合、その対応の中心的役割を果たす専門職員のことです。
健太の同期、長澤彩香22歳も、この春から同じく青葉児童相談所に採用された保育士で、この新米2人を中心に物語は展開していきます。
タイトルの『ちいさいひと』ですが、これは虐待されて一児保護されている子供達を意味します。
以下、登場人物のセリフの一部です。考えさせられますね…。
ひとりの人間として接し、
社会や親から見放された子供、
いろんなハンディキャップを抱えた子供たちを、
「おおきいひと(大人)」による保護の対象としてだけではなく、
ひとりの人間として、
幸せになる権利がある。
そんな思いを込めて、
子ども達を「ちいさいひと」
と呼んでいるんだ。
育児放棄
第一話目は育児放棄に関する虐待です。
母親の男遊びが原因で、一日中暗い部屋に閉じ込められたままの姉妹…。
汚い、臭い、暗いという汚部屋の様子がリアルに描かれています。
この悲惨な状況、実は母親の実家の敷地内なんです。
母親は自分の親(つまり子供達の祖母)に、「私たちの部屋には絶対に入らないでちょうだい!」と強く念を押しているため、同居しているにも関わらず、祖父母は気づきません(かなりの豪邸に住んでます、この一家…)。
「こんなに豪邸なんだから、ちゃんとごはんも食べさせてもらってるよ」と、最初は福祉司たちは事態を軽く見ていました。
ですが、健太が受けた一本の電話で事態は急変します。
母親の電話でただならぬ何かを察知した健太。
実は幼い頃に虐待を受けていた健太は、そういったSOSを人一倍敏感に肌で感じてしまう性格でした。
半ば強引に部屋に踏み込んだ健太の目に飛び込んできたのは、もはや餓死寸前の姉妹の姿…。
やっと助けてもらえると、部屋を出てきた姉妹に、それでも母親は「勝手に部屋を出てくるなんて、ママの子失格ね!」と怒鳴ります。
とにかく、マンガのタッチ含め、なかなかヘビーでパンチの効いた内容です。
こういった現実が、実は世界中のあちこちで、日常的に起きているということを、私たちは再認識する必要があります。
とても考えさせられるマンガですね。
ですが、そこはやはり少年誌らしく、熱血漢&爽やかな後味といった内容となってます。
身体的虐待
「パパよる帰ってきてぼくをなぐる。ぼくのうでとけちゃった」
こんな衝撃的な台詞が出てくる第二話は、身体的虐待がテーマです。
前夫のDVが原因で離婚した若き母親の再婚相手。これが、またもやDV夫に豹変してしまい、子供達が標的にされてしまいます。
再婚相手の父親からタバコの火を腕に押し付けられた長男が放った一言が、冒頭のセリフです。
兄弟は家から逃げてきたところを保護されますが、体中には全身、既に虐待の跡がありました。
言葉を失う大人たち…。
そんな中、母親までもが虐待に加わっていた事実が判明します。
子供を守ろうと思って再婚したハズなのに、自分までもが子供を虐待する母親になってしまった…。
前夫から受けたDVの壮絶な恐怖体験から、今の夫の指示にも従わざるを得なかったと語る母親。
ですが、逃げ場のない子供達はどうなるのでしょうか。
最終的には母親も含め、一時的に家族は離散させられ、また再出発できるようカウンセリングを受けることになります。
「ママと離れたくない」と、泣いて追いかける兄弟。
ですが母親の「いつか必ず迎えにくる」という言葉と、子供達の前向きな姿勢に後押しされ、「いつか皆で暮らせる日を夢見て」物語は幕を閉じます。
児童福祉司の仕事は子供を虐待から救うだけではなく、こうして壊れかけた家族をまた元の形に戻すお手伝いもするんですね。
本当に大変な職業ですね。
まとめ
その後も、育児放棄を軸に家庭内暴力や性的虐待など、あらゆる幼児虐待の話を盛り込んだ、主に1話完結型の内容となっています。
今、このマンガが飛ぶ鳥落とす勢いで人気ランキングの上位をキープし続けているのも、それだけ世間の注目を集めているからでしょう。
心当たりのある人も、また子育てに関心を持つ人にも、ぜひ読んでもらいたい作品です。
『実は虐待する人間もまた、かつては虐待の被害者だった』という話はよく耳にします。
この物語の主人公である相川健太もまた、幼い頃から母親により虐待を受けていた一人です。
ですが、健太は負けませんでした。自分がされたからといって、同じような大人には成り下がらなかった。
そして自身の経験を活かし、虐待児童を救う側に回ります。
全ての虐待を経験した人間が、この相川健太のような強く、そして優しい選択をすることを望みます。
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